EC(通販)事業者にとって、注文された商品の出荷作業は切っても切り離せない業務のひとつです。
自社ECサイトだけでオンラインショッピングを展開している場合はもちろん、楽天市場やAmazonなど大型ECモールに出店している場合は、特にこの出荷作業のスピードが重要となります。
なぜならECモールにおいては、
「注文を受け付けてからどれだけ早く商品を出荷完了させているのか」
という観点がショップの評価に大きく影響しているからです。
とは言えただ単にスピードだけを優先させるわけにもいきません。宛先を間違えてしまうミスや、必要な商品を梱包し忘れたミスなどが多発してしまうと、やはりショップの評価は大きく下がってしまいます。
出荷作業においてもっとも重要なのは、スピードと正確性であると言えるでしょう。
この記事では、そんな出荷作業をスピーディーに、そして正確に終わらせるために不可欠な道具である「ピッキングリスト」について、概要を解説します。
「ピッキング」とは、「摘み取る」「選択する」という意味を持つ英語の「picking」に由来する業界用語です。
摘み取る、という言葉のイメージ通り、この言葉は主に
という意味合いで用いられます。
出荷作業を大ざっぱに分けるならば
の3段階に分けられます。
このうち2~3のスピードと正確性を上げる方法は、どうしても「作業者が慣れる」か「人手を増やす」の2つだけになってしまいます。
段ボールを組み立てる手さばきや、荷物を素早く積み上げる技術は一朝一夕で身につくものではありません。
後者の人手を増やす方法については、人件費にゆとりのある事業者ならともかく、資金的・時間的な余裕の無さが理由でなかなか難しいという方も少なからずいらっしゃるかもしれません。
しかし1のピッキングだけは、やり方を工夫することでスピードと正確性を両立させることが可能な領域です。
いかにピッキングのやり方を工夫するのかが、EC事業者ごとの工夫の見せ所とさえ言えるでしょう。
このピッキングを行うためには、取り出さなければいけない商品の一覧(リスト)が必要です。EC業界ではそれが「ピッキングリスト」と呼ばれています。
ピッキングリストには2種類が存在します。
シングル(単独)ピッキングリストとは、注文(≒梱包する個口)ごとに商品をまとめたリストです。
たとえば以下のような出荷作業を想定します。
(例)
出荷しなければならない注文が3件ある
このとき、シングルピッキングリストには以下のように記載される
このように、シングルピッキングリストでは注文ごとに商品がまとめられます。
リストに記載されているとおりに商品を集めてくれば、そのまますぐ梱包作業へ移ることがシングルピッキングリストの強みです。
しかし一方で、こちらのリストでは
を何度も行き来することになってしまうという弱点があります。
その弱点に対応するために作られたのが、次に紹介する「トータルピッキングリスト」です。
トータル(総合)ピッキングリストとは、出荷しなければならない商品だけをまとめたリストです。
上記の例に合わせて、ナイフ・フォークを出荷しなければならない場合を想定します。
(例)
出荷しなければならない注文が3件ある
このとき、トータルピッキングリストには以下のように記載される
このように、トータルピッキングリストでは注文ごとの区切りを考慮せず、ピッキングする商品だけをまとめて記載します。
シングルピッキングリストの弱点であった「棚をいちいち行き来しないといけない」という弱点をカバーすることが最大の強みです。
ただし、すでにここまで読んで気づいた方もいらっしゃるでしょうが、このトータルピッキングリストにも弱点が存在します。
それは梱包作業場で注文ごとに商品を仕分ける手間が発生するというものです。
シングルピッキングリストにおいては最初から商品が注文ごとに仕分けられた状態で梱包作業場へ送られるため、そのまま速やかに梱包作業へ移ることが可能でした。しかしトータルピッキングリストではこの手間が梱包の直前で発生してしまいます。
シングルピッキングリストとトータルピッキングリストの違いは、注文ごとの商品仕分けを最初にやるか最後にやるかの違いであると言えるでしょう。
自分たちの倉庫に、また人数の規模に適したピッキングリストはどちらなのかを考慮して選ぶことが重要です。
先ほどの例では省略していますが、実際にピッキングリストを作成するためには、リストに記載しなければならない項目が複数あります。
もちろん事業者ごとそれぞれに必要な項目や書き方が存在するでしょうが、一般的な形式ではこれらの項目が必要であるということをぜひ確認してください。
SKUとは、商品をカラーやサイズなどの細かい項目ごとに区別するための番号のことです。
たとえば柄が同じTシャツが3種類あるとします。
(例)
このとき「Tシャツ」だけでは、どのサイズのことなのか分からなくなってしまいます。そのため
というように、どの種類のことか区別するための番号(コード)が必要です。
EC業界においてはこの番号(コード)が「SKU」(Stock Keeping Unit)と呼ばれています。
色違い、サイズ違い、数量の違いなどで種類が複数ある商品をピッキングリストに記載するには、このSKUが必要です。
言うまでもないことですが、シングルピッキング、トータルピッキングのどちらでも商品の数がいくつかを記載することが必要です。
基本的にどの倉庫においても、商品が保管されている棚にはそれぞれ番号が割り振られています。
「窓側の棚の奥の方」というあいまいな呼び方では、ベテランならともかく作業者ごとにピッキングのスピードで大きな差が出てしまいます。
「商品の数と種類は分かったが、それはどこに置かれているのか?」ということを作業者に分かりやすく教えるためには、このロケーション(棚番号)を記載しておくことが必要です。
シングルピッキングリストの場合は、注文ごとに商品を仕分けした状態でピッキング作業を行います。
そのためリストにも注文番号が記載されている必要があります。
逆に、トータルピッキングリストを利用する場合だとこの項目は必須ではありません。
ここからは、実際にピッキングリストを作成する方法を紹介します。
もっともシンプルなやり方です。Microsoft Wordなどの文書作成ソフトを使って、上記の項目が記載された表を作成・印刷し、そこに手書きやシールなどで商品を記録します。
もしくはもっと単純に、A4など持ち運びやすいサイズの紙を大量に用意してそこにペンで商品メモを書いていくというやり方でもよいでしょう。
取り扱う商品の総種類が少ない場合や、注文件数が少ない場合はこのやり方がもっともシンプルかつ手っ取り早いです。
ただし、これは商品の種類や注文件数が伸びるにつれてどんどん破綻していくやり方とも言うことができます。
人力での作業は、どれだけ注意しても必ず記載漏れや訂正版の共有漏れなどのトラブルを引き起こしてしまいます。もしこのようなケアレスミスに困っているならば、早めに以下のやり方へ移行すべきかもしれません。
商品の種類数が多くなってきた場合や、注文件数が増えてきた場合におすすめのやり方です。
以下の画像のような表を作成してください。
画像はスプレッドシートのスクリーンショットですが、もちろんExcelでも同様に作成可能です。
作業者が入力しなければいけない項目は
の2つだけで良い状態にするのが理想です。
そのため、
については関数を用いて自動で入力されるように設計するのがよいでしょう。
シングルピッキングリストの場合でも基本的な構成はトータルピッキングリストと一緒です。
ただし、「注文番号」を入力する列を追加する必要があります。列の箇所はどこでもよいのですが、もっとも左に書かれてある方が見やすいと感じる人が多いかもしれません。
また、上記の画像のように「1つの注文で複数種類の商品が購入されている場合」については、セル結合や1行ずつ同じ注文番号を書き込むという対応が必要になります。
もちろんレイアウトに正解はありません。重要なのは、誰が見ても理解できるほど分かりやすいことだけですので、ぜひ自社にとって作業しやすい表を検討してください。
本記事の執筆者である株式会社GoQSystemがもっともおすすめする作り方です。
これまで見てきたように、上記2つのやり方にはそれぞれ
という弱点があります。
しかし受注管理システムでピッキングリストを作れば、
というように、上記の弱点をカバーすることが可能です。
受注管理システムを導入するためには、様々なシステムから自社に適したものを選ぶことが重要です。
興味がある方はぜひこちらの記事も参考にしてください!
ピッキングリストを導入することで、以下のようなメリットが見込めます。
注文を都度確認して出荷準備するやり方や、送り状ラベルだけで商品を確認するやり方は、人力での作業になる以上、必ずケアレスミスのリスクがついて回ります。
もちろんピッキングリストが100%ミスを防止する、ということはありえません。リストに書いてある商品を見落とすこともありえるでしょう。
しかしひとまとめにされたリストを元に確認するという作業が習慣として定着すれば、その可能性がぐっと低くなることは間違いありません。
出荷作業において、作業者が属人的な腕前を披露する領域は梱包作業や荷運び作業であるべきです。
ピッキングリストの導入は、単にピッキングがやりやすくなるだけではなく、出荷作業をいくつかの工程にくっきりと区分けするというメリットをもたらします。
区分けするということは、つまり作業者ごとに分担作業が可能になるというメリットにも同様に期待できるでしょう。
ピッキングリストは、誰が見ても同じ情報を読み取れる分かりやすい形式でなければなりません。
人によって読み取り方が異なってしまうものや、ベテランでなければ書いてあることの意味がわからないものはリストとしてふさわしくないとさえ言えるでしょう。
これはつまり、ピッキングリストを導入するとベテランの作業者も歴が浅いアルバイトの作業者でも(棚を行き来するスピードに差はあるでしょうが)同じ作業をこなせるようになるということです。
業務を効率化させるためには、ベテランでなければ分からない工程を可能な限り削り、初心者でもリストを見れば理解できるかたちに変えていくことが必要です。
この点において、ピッキングリストは比較的簡単に作成でき、なおかつ効果的なメリットをもたらすのにちょうどいい施策と言うことができます。
上記「受注管理システム(EC業務の管理システム)での作り方」で必要になるシステムについて、その種類を簡単に紹介します。
『ネクストエンジン』は、NE株式会社が開発・提供する受注管理システムです。
以下のような特徴があり、導入社数は業界No.1という実績を有しています。
『クロスモール』は、株式会社アイルが開発・提供する受注管理システムです。
料金体系はネクストエンジンと同じく従量課金制を採用していますが、何の量に対して課金するのかという点で相違点があります。
『GoQSystem』(ゴクーシステム)は、株式会社GoQSystemが開発・提供する受注管理システムです。
上記2社に対して、以下のような相違点を有しています。
本記事の要旨は以下の通りです。
株式会社GoQSystemでは、すべてのEC(通販)事業者の方々に作業時間の短縮と、そこから生まれる余裕を提供することを目指しています。
など、多数の機能をご用意して事業者さまの業務をもっと楽にいたします!
このようなお悩みを抱えている方は、ぜひお気軽にGoQSystemへご相談ください!